大きな木

大きな木に抱きついて、

両手をそっと木肌にあてた。

 

こころが凍りついたように縮こまって、

言葉が出ない。

 

ただ目を閉じて、じっとしてた。

 

すると・・・

 

先に、木が動いた。

 

手のひらに風が吹いて、

カチカチに凍りついたこころが

ゆるゆると溶けていく。

 

思わず、

おでこも木肌にすりつけた。

 

大きな木は、

とほうもなく大きくなって、

 

わたしは、木のなかにたたずんでいた。

 

 

文  作家・心理カウンセラー 宇佐美百合子